キロンという星-キロンの象意をたどる

前回は、天文学におけるキロンとギリシャ神話のキロンを見てきました。
神話と照らし合わせながら解釈を書いていたら、思いのほか長くなってしまったので、今回はキロンの象意を整理することに留めておきます。

1.キロンの象意

≪キロンの象意≫
心の傷、コンプレックス、トラウマ、恐れ、傷ついたヒーラー、癒し、孤児、インナーチャイルド、群れから離れた子牛、スケープゴート、孤独、疎外感、アウトサイダー、思いやり、奉仕、犠牲、脆弱、障害、弱点、置換、オルタナティブ、メンター、医師、教師、予言者、統合、解脱。

ギリシャ神話のキロンの物語を読んだ後であれば、これらの象徴がどれも腑に落ちるのではないかと思います。

2.象意は“そのまま”ではない

他の天体にも言えることですが、象意の中には見ていて不安になるような言葉もあります。
けれど、象意とはその天体の性質を象徴するキーワードのようなものであって、
たとえば「孤児」と書いてあるからといって、キロンを持つ人がみんな孤児になるわけではありません。
また、自分の好ましい象意に強引にこじつけて読むのも適切ではありません。

実際には、配置や他の天体との絡みによって、親和性の高い象意が自然と浮かび上がってくるような感覚になります。
なので、象意だけを見て無暗に怖がらないでいただけたらと思います。

3.キロンの象意が強く出やすい配置

キロンは誰のチャートにもありますが、以下のような配置では、
より“個人の実感”として浮かび上がりやすい傾向があります。

軸に近い配置──影響力強し

アセンダントやMCに近い
→ 自分の存在や社会的役割に“傷”が表れやすくなります。
→ 自分自身の打ち出し方や、社会での立ち位置に違和感や痛みを感じやすい構造です。

1・4・7・10ハウス(アンギュラーハウス)にある
→ 自己像、家庭、対人関係、社会的役割などにキロンのテーマが表れやすくなります。
→ 特にアンギュラーハウスは、人生の中でも目に見える形で影響が出やすい領域とされます。

内面的な配置──“見えにくい痛み”として表れやすい

1・6・8・12ハウスにある
→ 自己像、健康、深層心理、無意識など、“内面”に関わる領域にキロンのテーマが現れやすくなります。
→ 外からは見えにくい痛みや違和感として感じられ、自分の中で言語化しにくい葛藤として残ることも。

補足:1ハウスが両方に含まれる理由
→ 1室は、アセンダントと重なるため、“外的印象”と“内的自己像”の両方に関わるハウスです。そのため、キロンがあると「自分をどう見せるか」と「自分がどう感じているか」の間にズレが生じやすく、“見せ方”と“感じ方”の両方に痛みが表れやすくなります。

パーソナル天体との絡み──“日常的な自己表現”に影響が表れやすい

太陽・月・水星・金星・火星とハードアスペクト
→ 自我、感情、思考、愛情、行動など、日常的な自己表現に“痛み”が出やすくなります。
( 中でも、特に影響が強いのは、太陽・月)

人生の舵取りに影響が表れやすい

チャートルーラーとアスペクトしている
→ チャートルーラーとは、アセンダントの支配星であり、人生の舵取り役のような存在です。
→ キロンがこの天体と絡むと、人生の進め方や“自分らしさ”の打ち出し方に、影響が表れやすくなるかもしれません。

もちろん、これらの配置があるからといって、必ずしも強い痛みを経験するとは限りません。
ただ、キロンの象意が“個人の物語”として表れやすくはなるかもしれません。

4.キロンの傷──理不尽に背負わされるもの

キロンの神話を思い返すと、ふと「親の因果が子に報う」というフレーズが浮かびました。
父クロノスの悪行の報いが、罪のないキロンに及び、彼が苦しむ──
キロンの示す傷とは、自分のせいではないのに理不尽に背負わされ、しかも逃れられずにずっとついてまわるような種類のものなのかもしれません。
神話から心の傷克服のヒントを得ようとしても、キロンの場合は“解脱”のような境地で、
そのまま参考にするには、普通の人にはハードルが高すぎるような気もします。

5.キロンは誰のチャートにもある

とはいえ、キロンは出生図のどこかに必ず存在します。
つまり、誰もが大なり小なり心の傷やコンプレックスを抱えているということになります。
キロンの出方や実感には個人差があり、
あまり感じないという人もいれば、辛い体験を通してトラウマとなっている方、
あるいは医療従事者やヒーラーなど、癒しの仕事に就いている方など、様々です。
キロンは公転周期がそこそこ長いため、同年代の人はだいたい同じサインにあります。
そのため、キロンは個人というより集団の問題に関連しているとされますが、
配置や他の天体とのアスペクト次第では、個人レベルでキロンのテーマを経験することになります。
このあたりが、人によってキロンの実感に差が出る理由のひとつなのかなと思います。

6.傷とともに生きるということ

心の傷やコンプレックスのない人はいません。
自分の傷はとても大きく感じるものですが、それに囚われて人生をめちゃくちゃにしてしまわないことを願うばかりです。
「こんな自分、嫌だ」と否定するのではなく、
自分を認める・許す・受け入れる──傷とともに生きていく。
それがキロンの癒しであり、キロンの半人半馬という姿の「統合」なのではないかと思います。
とはいえ、私自身は…
そんなことを言っても、私自身はまだ全然癒しの段階までいっていませんけどね……。

次回予告:私のキロンを読む

長くなってしまったので、続きは「キロンという星-牡羊座にある私の傷」へ。
今回は少しふわっとした話になりましたが、次回は私の出生図のキロンを使って、
より具体的に考察していこうと思います。

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