「月がこうしたいと願う方向性を、太陽の手段やエネルギーで叶えていく」──
これは、ノエル・ティル先生の「太陽と月のブレンド理論」の考え方です。
今回はこの理論を、もっと日常的な視点から見つめてみたいと思います。
私と同い年で誕生日が1日違い、月以外の天体のサインがまったく同じCさんという人がいます。
同じ牡羊座の太陽を持つ私たちですが、日々のふるまいを見ていると、
太陽と月がどのように連携して働いているかが、はっきりと浮かび上がってきます。
1.Cさんの月・双子座(推定)──感情を“情報”として処理する
Cさんは、以前「トランジットのドラゴンヘッドが重なる時」という記事にも登場した、私の現在の上司です。
出生時間は不明ですが、月は双子座後半〜蟹座初期の間。
けれど普段の様子から、「この人は絶対に蟹座ではない」と言いきれます。
日々のふるまいを見ていると、「楽な方へ流されやすいな」と思う場面が多くあります。
その印象から、Cさんは双子座後半──月が金星とのセクスタイルしかない時間帯に生まれているのではないかと、推測しています。
また、双子座の月は、感情を“情報”として扱うのが得意です。
気持ちを深く抱え込まず、状況に応じてすばやく切り替える。
実際、Cさんを見ていると、そうした“双子座独特の感情スタイル”が、日常のふるまいに表れているように感じます。
印象的だったのは、職場で私がお客様に理不尽に怒鳴られた場面。
私が恐怖で固まってしまったとき、Cさんはすっと前に出て場を収めてくれました。
あとでお礼を言うと、「俺、怒られてもダメージ受けない人なんだ」と笑っていました。
また別の日には、Cさんがミスをして怒られていた場面で、近くにいた関係ない私の方がダメージを受けていたのに、本人はケロっとしてお昼にご飯をおかわりしていたこともありました。
こうした反応を見るに、Cさんは「怒られた=行為が否定されただけ」と受け止めていて、
「自分自身が否定された」と感じる事はないのだろうなと思います。
つまり、感情と事実を自然に切り分けることで、ダメージを受けにくい。
その“湿度を感じない感情スタイル”に、とても双子座の月らしさを感じるので、Cさんは「絶対に蟹座ではない」と断言できるのです。
2.私の月・蟹座──感情と記憶が風化しない
私の月は蟹座にあります。
蟹座の支配星は月なので、最も原始的な状態にある月と言えるのではないでしょうか。
そのため、Cさんのように感情と事実を自然に切り分けることは、私には不可能です。
蟹座は記憶力が良いサインと言われますが、それは感情と記憶が一体化しているから。
怒られた記憶も、失敗した瞬間も、真空パックのように保存されていて、
似たような場面に出会うと、過去の痛みがそのままよみがえる──そんなところがあります。
つまり、そういった鮮烈な痛みの記憶の蓄積が、蟹座の傷つきやすい繊細さや過剰な防衛本能につながるのではないかと思います。
蟹座の月は、安心感を求める気持ちが強く、慣れ親しんだ居場所から動きたがらないところがあります。
けれど私の場合は、ASC合の冥王星とDSC合の太陽のオポジションからなるTスクエアの頂点が、MC合の月になっている。
自分自身の在り方と生き方が、それを許さない──そんな、わけのわからない状態になっています。
さらにMCに重なることで、親や権威ある人に守ってもらうことが、心の安全につながりやすくなります。
“いい子でいる”というふるまいが、安心を得るための戦略になる。
だから、それを脅かされることに対して、強い防衛反応や自己否定感が生じることにもなる。
つまり私は、皆が求める“いい子”でなくなると、見捨てられるのではないかという強い恐怖心を持っていて、
いつも気を張って、失敗しないよう、先回りしていろんな事を考えてしまう──
そんな先回り思考が、強い不安感へとつながっているのではないでしょうか。
3.“せっかち”というふるまい──月によって違う動機
私もCさんも、牡羊座の太陽(しかも金星も水星も)を持っているため、せっかちで衝動的、場当たり的なところがあります。
けれど、その“せっかち”の動機はまったく違います。
Cさんは、仕事が早く頼んだことをすぐにやってくれるタイプです。
以前の上司がなかなか動いてくれなかった経験がある私は、びっくりして、思わず「早いですね」と言ってしまったのですが、
Cさんは「忘れる前にやってしまおうと思って」と返してくれました。
双子座の月らしい、情報処理のスピード感が表れている言葉だと思います。
一方の私は、先回りしてあれこれ考えすぎてしまうところがあり、
放っておくと最悪のパターンの妄想がどんどん膨らんでいきます。
それを一刻も早く解消したくて、結果的にせっかちに動いてしまう。
たとえば先日、とある書類を出す必要があったとき、Cさんは勝手に人の代筆をしてまで提出しようとしていました。
私は「そこまで急ぎの書類でもないので、数日待ってみたらどうですか?」と言ったのですが、
Cさんは待つこと自体が面倒くさかったようで、超不満顔でした。
でも、私は、代筆によって後々問題が出るのが嫌で、きちんと処理したかったのです。
結局、次の日にその書類を書くべき人が事務所に来て、普通に書いてもらって、事なきを得ました。
……っていうか、Cさん、せっかちすぎじゃないですか??
双子座は、流れが止まるのが、本当に苦手なんだろうなと思うとともに、
「私は自分の不安感に触れさえしなければ、せっかちにはならないのだな」と気づかされました。
4.まとめ──月が違えば、動機も違う
こうして見てみると──
Cさんは“流れを止めるのが嫌”でせっかちになる。(双子座的動機)
私は“不安感を解消したくて”せっかちになる。(蟹座的動機)
同じ“せっかち”という行動でも、月によってその動機や感情の流れ方はまったく違ってきます。
「月がこうしたいと願う方向性を、太陽の手段やエネルギーで叶えていく」── このノエル・ティル先生の理論は、日常の中でも当たり前のように働いている。
そうは言っても、蟹座は活動宮なので、柔軟宮の双子座よりも“動き出す圧”は強いのかもしれません。
私の“せっかちさ”は、感情の高まりによる焦りと心配が原動力となっているところがあり、
せっかちというより、テンパっている人と周りからは見られている気がします。
その様子にみんな気おされ、「え、何?そんなに緊急なの?」と戸惑いながらも従ってくれる事が多いように思います。
実際、先ほどの書類の件でも、Cさんは不満顔を見せながらも、私の意見を受け入れ待ってくれました。 それは、単純に私の意見がもっともだと思ったからなのかもしれないし、 もしかしたら、上でも触れていたCさん自身の“流されやすさ”が出たからなのかもしれません。
こうした月の違いが、日常のふるまいの中でも意図せず浮かび上がってくるから、面白いですね。

