ハルブとヘイズとは何か─いにしえの技法に触れる

前回、『セクトについて』という記事を書いた際に、収まりきらなかったテーマ──ハルブとヘイズについて、今回は掘り下げていこうと思います。

この技法は、セクトの知識を前提として語られるものなので、もしセクトについてあまり馴染みがない方は、先にそちらの記事に目を通していただけると理解が深まるかと思います。

1.ハルブとヘイズの由来と意味

河内邦利先生の『西洋占星術 星の階梯Ⅰ』によると、ハルブとヘイズはアラブの占星術家たちが重用していた技法だそうです。

ハルブの惑星がネイタルチャートに1個でもあれば、その人は幼少時代を生き延びるとされ、ヘイズの惑星が1個でもあれば、その人は家庭や地域から求められる人になるとされています。

子どもが成人するまで生き延びるのが難しかった時代の占星術─現代の感覚では少しピンとこない部分もありますが、技法としての面白さは十分にありますので、先に進みます。

2.ハルブの定義──説①と説②の違い

伝統的な占星術の文献を片っ端から読み漁っていたところ、ハルブの定義には大きく分けて2つの説がありました。

説①
の天体(太陽・木星・土星)が、に地平線上にあり、
の天体(月・金星・火星)が、に地平線下にあること。

説②
の天体(太陽・木星・土星)なら、に地平線上にあり、に地平線下にあること。
の天体(月・金星・火星)なら、に地平線上にあり、に地平線下にあること。

それぞれの説に私のネイタルチャートをあてはめてみると、こんな感じです。

ハルブとなる天体?
(私の場合)
説①火星
説②月・金星・太陽・水星※

※水星は、太陽より先にアセンダントを昇るときの天体となり、太陽より後にアセンダントを昇るときの天体となるためです。

このふたつの説では、上記のようにハルブとされる天体がまったく違ってしまいます。
いったいどちらが正しいのでしょうか?

あちこち調べたところ、17世紀のイギリスの占星術師ウィリアム・リリーが『説①』をハルブとして記述したことが原因で、混乱が生じたようです。
それより古い文献を見ると、『説②』がハルブであるという記述が見られるため、どうやら正しいのは『説②』ということになりそうです。
ファイナルアンサー:説②。

3.ヘイズの条件

ヘイズとは、ハルブであることを前提として、男性格の天体なら男性格のサインに、女性格の天体なら女性格のサインに入っていることを指します。

天体サイン
男性格太陽・火星・木星・土星牡羊座・双子座・獅子座・
天秤座・射手座・水瓶座
女性格月・金星牡牛座・蟹座・乙女座・
蠍座・山羊座・魚座

水星は、の水星=男性格の水星、の水星=女性格の水星となります。


ハルブとなっていた天体がヘイズになるのかチェックしてみるとこんな感じです。

ハルブの天体
(私の場合)
サイン
(私の場合)
ヘイズか否か
(私の場合)
月(女性格)蟹座(女性サイン)ヘイズ
金星(女性格)牡羊座(男性サイン)
太陽(男性格)牡羊座(男性サイン)ヘイズ
夜の水星(女性格)牡羊座(男性サイン)

私のネイタルチャートでは、月と太陽がハルブであり、ヘイズにも該当するようです。
ただし、弱いハウス(6・8・12)に置かれたヘイズは働かないという説もあり、私の太陽はまさに6ハウスにあります。

それに比べて、セクトを得ていて、ハルブでありヘイズであり、ルーラーであり、MCと合の強すぎる月─この月をどう読むかが、私の謎が多いと言われるホロスコープ解読の鍵を握るのではないかと思います。

4.ハルブとヘイズの恩恵とは何か

冒頭でも述べましたが、ハルブの惑星があると幼少期を生き延びる力があり、ヘイズの惑星があると家庭や地域から求められる存在になるとされます。

この「求められる」というニュアンスが少し曖昧なのですが、調べてみると、亡くなる際にも誰かに看取ってもらえる──そんな意味合いもあるようです。
つまり、家庭や地域など、自分が所属する“小社会”において、決して疎外されることはないということなのではないでしょうか。
恩恵としては一見地味に感じるかもしれませんが、現代では社会的孤立の問題が取り上げられることも多く、ヘイズの惑星があることで、そうした孤立から守られる可能性がある──そう考えると、なかなかに重要な要素なのかもしれません。

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