「月が与えるものは見せかけと虚構。人が生きる目的は太陽を獲得することにある」
この言葉は、マドモアゼル愛先生の『月の教科書』からの引用ですが、西洋占星術業界では「太陽を目指せ!」という考え方は、ある種の常識として語られています。
けれど、私のように蟹座の月がMCに合し、チャート全体に強く影響を及ぼしている場合、
月の存在感があまりにも大きく、何をどうすれば太陽を獲得できるのか──正直、よくわからなくなることもあります。
そんな中、心理占星術の第一人者であられる故ノエル・ティル先生の「太陽と月のブレンド」理論に出会い、この巨大すぎる月をどう扱えばいいのか、ヒントを得られたような気がしました。
今回は、その「太陽と月のブレンド」理論について、私自身の視点を交えながら綴ってみたいと思います。
1.太陽と月のブレンド理論とは
ノエル・ティル先生は、太陽と月の関係を以下のように定義しています
- 月:統合的欲求(integrative need)
人が「生きている」と実感するために必要な、深層の欲求。
例:安心感、つながり、共感、自己保存など。 - 太陽:欲求充足のために使うエネルギー
月の欲求を満たすために、どんな“燃料”を使うか。
例:創造力、意志力、行動力、自己表現など。
この理論では、月が「こうありたい」と願う方向性を示し、太陽がそれを実現するための手段やエネルギー源になると考えます。
ノエル・ティル先生は、これを人生を動かす“重要な両輪”として捉え、どのような道を目指すべきかヒントを示してくれています。
2.月の欲求は、幼いころの“感じていたこと”
月は0〜7歳の年齢域を象徴し、まだ言葉にならないまま、でも確かにそこにあった「感じていたこと」「求めていたもの」をそっと映し出しています。
それは、大人になった今も消えることなく、心の奥で響き続けています。
たとえば、月が山羊座にある人は、「成果を出したい」「評価されたい」という欲求を抱きやすいかもしれません。それは一見すると、とても立派な目標に思えるものです。
けれど、その“立派な目標”の奥には、「ちゃんとできてるって認めてほしい」「ほめてほしい」といった、もっと幼くて、切実な“安心したい気持ち”が潜んでいることがあります。
月の欲求を読むとき、それが“幼いままの自分の声”だと捉えてみると──
自分の中にある「満たされたい願い」や「安心を求める揺らぎ」、
もっと言ってしまえば、今感じている生きづらさの根っこにあるもの──
そういったものが、リアルに見えてくるのではないでしょうか。
3.月は願いを叶える側にはなれない
そもそも、太陽と月には明確な役割の違いがあります。
月は、幼少期に「感じていたこと」や「求めていたもの」をそっと映し出す存在。
その時に形成された“感じ方のパターン”によって、今もなお、自動的に反応しているにすぎません。自分の内側で感じることはできても、現実を動かす力は持っていないのです。
一方、太陽は、その願いを現実で叶えるための創造的な力。
月が「こうしたい」と願う方向性に対して、太陽が「じゃあ、こうやって叶えよう」と手段を与えていく──それこそが、その人の“生き様”となって、人生を輝かせるのです。
4.蟹座の月 × 牡羊座の太陽──私自身のブレンド例
蟹座の月が抱える“幼い声”
私は、蟹座の月を持っています。
よく言われる蟹座の月の特徴は、こんな感じです:
- 安心できる居場所を求める
- 深い絆や共感を大切にする
- 感情の波が激しく、繊細
- 母性本能・保護欲が強い
こうして並べてみると、まるでお母さんのように、誰かを包み込んで守ってくれそうな繊細で優しい雰囲気を感じるかもしれません。
それもそのはず──月は占星術において“母親”や“母性”を象徴する天体であり、蟹座はその月を支配星(ルーラー)に持つサインなのです。
だからこそ、蟹座の月には“守る側”のような印象が自然と重なって見えるのかもしれません。
けれど──冒頭で引用した通り、
「月が与えるものは見せかけと虚構」
その奥に潜んでいるのは、もっと幼くて、もっと切実な声──
「ひとりにしないで…」
「大事にして、守ってほしい…」
こんなふうに、ただ願うことしかできない、無力な幼い子どもが、
自分の力でその願いを叶えることができるでしょうか?
つまり──月は、願いを叶える側にはなれないということ。
月は、ただ「こうしたい」と願うだけ。
その願いを現実に叶えるには、太陽という創造的な力が必要なのです。
牡羊座の太陽が与えてくれる力
月が示すのは、「こうありたい」という内なる願い。
太陽は、それを現実のかたちにしていく手段やエネルギー。
このふたつが揃ってはじめて、人生は動き出します。
まるで、両輪が噛み合うように。
私自身の組み合わせは「蟹座の月 × 牡羊座の太陽」。
月の欲求は、「ひとりにしないで…大事にして、守ってほしい」という、幼いころからの安心への願いです。
その願いをきちんと叶えるには、
迷いを吹き飛ばすような、まっすぐに突破していく牡羊座のエネルギー
それを意識的に使っていくことが求められているのだと思います。
守ってほしいからこそ、私が率先して、安心できる場を開拓していく。
それは「誰かに守られる」こととは違うけれど、結果的に月の欲求が満たされていく唯一の道でもあります。
(もしかしたら、私の月と太陽がスクエアになっているから、こうした“ちょっと無茶な叶え方”が必要になってくるのかもしれません。これに関してはいずれ、考察記事を書きたいと思います。)
つまり──
月の“幼い声”を、太陽の“創造的な力”で現実に叶えていく。
それが、太陽と月のブレンドの本質なのかもしれません。
5.まとめ
今回は、ノエル・ティル先生の「月と太陽のブレンド」について考えてみました。
先生の著書などでは、サインと天体の組み合わせまでの例が中心で、ハウスやアスペクトまでは書かれていません。
ただ、わたくし好奇心が旺盛なので──
いつか、ハウスやそのほかの要素も加えて、さらに深掘りしてみたいと思っています。


